テラーノベル
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教室の空気はもう“騒ぎ”ではなく、“公開処刑”だった。美桜たちが去ったあと、男子たちの間に変な熱が残り、
それが遥へ一気に向けられた。
「……なぁ、お前、さっき“ふざけんな”って言ったよな?」
にじり寄ってくる男子。
足音が重く、逃げ道をふさぐように周囲が囲む。
遥は黙り込む。
言っても地獄、黙っても地獄──
その二択しか知らない。
「返事しろよ、奴隷」
肩をつかまれ、壁に叩きつけられる。
背中に衝撃が走り、呼吸が乱れた瞬間──
ゴッ。
みぞおちに拳が沈む。
肺から一気に空気が抜け、遥は声にならない呻きを漏らした。
「“奴隷”が逆らったら、どうなるか教えてやるよ」
男子がつかんだのは遥の制服の胸元。
引きずるように机のほうへ連れていき、そのまま身体を押し倒す。
ガタンッ。
机が派手に揺れ、周りの男子が笑った。
「痛ぇ? 痛ぇよな。
でも、お前の立場ってさ……痛いとか関係ある?」
別の男子が後ろから首元を押さえつけ、
耳元で低く言葉を落とす。
「“嫌”とか思っていいと思うなよ。
お前が嫌がるほど、こっちは楽しいんだよ」
拳、蹴り、押しつけ、つかみ上げ──
暴力の種類が、明らかに“遊び”から“制裁”に変わっていた。
遥は掠れた声で、必死に言う。
「……もう……やめろ……」
すると、男子たちの笑いが止まり、
代わりに冷たい沈黙が落ちた。
リーダー格が近づき、遥の顎をつまんで顔を上げさせる。
「──命令形、誰に向かって言ってんの?」
頬に横殴りの拳。
机に後頭部がぶつかり、光が弾けるような痛みが走る。
「“止めてください”だろ?
言い直せよ」
「……っ……やめ……」
再び拳。
「違うだろ。
“奴隷は、殴られるのが当たり前です。
だからどうか、許してください”だろ?」
遥の顔が歪む。
呼吸は荒く、目の焦点も揺れている。
でも、言わない。
それを見て、男子たちはさらに笑った。
「言わねぇと……こうなんだよ」
制服の襟をつかみ、壁に固定したまま、
何発も、リズムを刻むように殴る。
感情ではなく、作業の暴力。
機械的な残酷さ。
遥は喋れないほど息が詰まり、
それでも目だけは男子たちを見返していた。
「なんだよその目。
まだ逆らってるつもり?」
リーダー格の男子が、わざと全員に聞こえるように言う。
「──もっと分からせるか」
腕をねじられ、背中に痛みが走る。
別の男子が足を引っかけ、遥は床に叩きつけられた。
「土下座しろ」
「声出して謝れよ」
「奴隷の態度ってやつ、見せてみろ」
遥は息を荒げながら、床に手をついて身体を起こす。
そのときだった。
「……なんで……俺ばっか……」
漏れた声は、不満でも反抗でもなく、
なかば意識が飛びかけた本音に近い弱音だった。
だが男子たちは違う意味で受け取った。
「は? 文句? 文句言った?」
「“奴隷のくせに”まだ分かんねぇの?」
完全に逆効果。
男子たちは一気に遥を持ち上げ、
後ろの壁に身体を叩きつけた。
「次そういうこと言ったら、もっと酷ぇことするからな」
拳を最後に一発、みぞおちへ。
遥は崩れ落ちるように膝をついた。
男子たちの顔は笑っている。
しかし、その笑顔は
“いじめ”ではなく
“処罰の快感”へと堕ちたものだった。
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