テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『お餅』🌹
361
るしゅ
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
“凛”が、白石の席に座っている。スマホを持って。 笑っている。 本物の凛は、完全に固まっていた。
凛
声が掠れる。 “凛”は、ゆっくり顔を上げる。 その顔。輪郭が、少し崩れている。 でも。本物より、静かだった。落ち着いている。 まるで。“未読側”になった瞬間、感情が削れていくみたいに。
“凛”『通知、怖い?』
凛
凛が、後ずさる。でも。“凛”は立たない。 白石の席。そこに、座ったまま。 スマホを見つめている。
“凛”『でも見ちゃうよね』
ブッ。 凛のスマホ。
【未読12件】
凛
“凛”『返事、待ってるから』
凛
凛が、スマホを床へ叩きつける。 ガンッ!! ヒビ。でも。画面は消えない。 ブッ。
【返信してください】
ブッ。
【既読を確認】
ブッ。
【未読13件】
増えていく。凛の呼吸が壊れ始める。
奈央
凛
凛が叫ぶ。
凛
その瞬間。教室中のスマホ。 一斉に、返信欄が開いた。
全員「っ」
カーソル点滅。入力予測。
【ごめん】
【気づかなかった】
【あとで返す】
【今忙しい】
透の喉が冷える。 今まで、自分達が使ってきた言葉。全部。そこに並んでいた。 その時。教室後ろ。“凛”が、小さく笑う。
“凛”『便利だよね』
ノイズ混じりの声。
“凛”『ちゃんと断ってる感じするもん』
誰も動けない。
“凛”『でも』
ゆっくり顔を上げる。
“凛”『待ってる側って』
スマホを掲げる。
『その間ずっと通知欄見てる』
ブッ。 教室の照明。一瞬暗転。その瞬間。 教室中に、人影が増えていた。大量。 机の間。廊下側。窓際。全部。 スマホを持って立っている。顔はない。 でも。画面だけ光っている。 未読。 未読。 未読。 透の頭が痛む。その中に。 白石がいた。結衣も。 そして。“透”も。 全員。スマホを見ながら、こちらを見ている。
伊織
伊織の声が震える。 すると。白石が、ゆっくり口を開く。
『見えてないんだよ』
透の呼吸が止まる。
白石『通知じゃないの』
結衣『その向こうにいる人』
“透”『後で返すって』
“凛”『存在を止める言葉だから』
教室が、冷え切っていく。 その瞬間。透のスマホ。着信。
【母】
透
震える。怖い。でも。出ないと。また増える。 透は、震える手で通話を取る。
透
ノイズ。 ザーッ…… そして。母の声。
『……誰?』
透の血の気が引く。
透
『このスマホ、誰が持ってるの?』
透
沈黙。そして。小さい声。
『透……?』
音が遠い。通信が悪いみたいに。
『ごめん』
『顔、思い出せない』
通話が切れた。 ブツッ。 透の呼吸が止まる。その瞬間。教室後ろ。 白石の席。 “透”が、ゆっくり立ち上がる。 そして。本物の透に向かって、静かに笑った。
『次、席空くね』