テラーノベル
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放課後の相談室。
窓の外はもう暗くなり始めている。
紙には短く書かれていた。
「友達と遊んだあと、すごく疲れます。
嫌いじゃないのに疲れるのが嫌です。なんでですか?」
少し沈黙があった。
遥が先に口を開いた。
「普通だと思う」
日下部が顔を上げる。
「普通?」
「人といるのって、ずっと何か見てるから」
蓮司が腕を組む。
「何を」
遥は少し考える。
「空気とか。相手の顔とか。言い方とか」
少し間。
「間違えないようにしてると、疲れる」
日下部が言う。
「でもさ、それやらない人もいるよな」
「いる」
「なんで違う」
遥は窓の外を見る。
「慣れじゃないと思う」
蓮司が言う。
「じゃあ何だよ」
遥は少し考える。
「安全かどうか」
沈黙。
日下部が眉を動かす。
「安全?」
「何言っても大丈夫な相手だと疲れない」
「そうでもないぞ」
蓮司が言う。
「仲いいやつでも疲れる」
遥はうなずく。
「疲れる」
少し間。
「でも種類が違う」
日下部が言う。
「どう違う」
遥は少し言葉を探す。
「安全な相手だと、
疲れても回復する」
沈黙。
蓮司が言う。
「安全じゃない相手だと?」
遥は言う。
「減る」
日下部が少し笑う。
「HPみたいだな」
遥は小さくうなずく。
「たぶん近い」
蓮司が言う。
「もう一個ある」
二人が見る。
「頭使ってるから疲れる」
日下部が言う。
「頭?」
「会話って処理量多い」
「どういうこと」
蓮司が指を折る。
「相手の言葉聞く。意味考える。返事考える。顔作る」
少し間。
「同時進行だ」
日下部が言う。
「ゲームみたいだな」
「高難度な」
遥が言う。
「一人だとやらなくていい」
蓮司がうなずく。
「だから回復する」
日下部が紙を見る。
「でもさ」
少し間。
「嫌いじゃないって書いてある」
遥がうなずく。
「そこ大事」
蓮司が言う。
「嫌いだから疲れるわけじゃない」
遥が言う。
「むしろ逆もある」
日下部が言う。
「逆?」
「好きな相手ほど疲れる」
蓮司が少し笑う。
「あるな」
遥が言う。
「大事にしようとするから」
沈黙。
日下部が言う。
「じゃあどうすればいい」
蓮司が言う。
「減らすな」
「何を」
「回数じゃない」
少し間。
「密度だ」
日下部が言う。
「意味わからん」
蓮司が言う。
「長時間一緒にいるより」
少し間。
「短くても楽な時間を作る」
遥が言う。
「無言とか」
日下部が言う。
「それ友達か?」
遥は即答する。
「友達だよ」
少し沈黙。
蓮司が言う。
「もう一つ言うと」
二人が見る。
「疲れるのは悪いことじゃない」
日下部が言う。
「なんで」
「使ったってことだから」
遥が静かに言う。
「使えるってことでもある」
日下部が言う。
「何が」
遥は少し考える。
「人といる力」
沈黙。
蓮司が紙を机に戻す。
「壊れてるわけじゃない」
日下部が言う。
「むしろ正常だな」
遥が言う。
「疲れるくらいがいいと思う」
少し間。
「疲れない関係は」
日下部が言う。
「理想じゃないのか」
遥は首を振る。
「何も起きてないだけのこともある」
沈黙。
蓮司が言う。
「帰ったら寝ろ」
日下部が言う。
「雑だな」
「でも正しい」
遥が小さく笑った。
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