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遥の相談室3

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遥の相談室3

25 - 第25話 褒められても、自分に向けられてる気がしない

2026年03月06日

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「それ、俺じゃない気がするんです」

「何が」

「褒められるとき」

「例えば?」

「“優しいね”とか。“気が利くね”とか」

「言われるんだ」

「はい。けっこう」

「で、違う?」

「違うっていうか……」


少し間があく。


「その人が見てるの、俺じゃないと思うんです」

「うん」

「たぶん、“そう見えた瞬間”を褒めてるだけで」

「うん」

「本当の俺が優しいわけじゃない」

「じゃあ何?」

「……普通にしてただけです」

「普通?」

「怒らないようにしてるとか。空気壊さないようにしてるとか」

「それ優しさじゃないの」

「違います」


即答だった。


「ただ面倒を避けてるだけです」

「でも相手は優しいって言う」

「だから」


小さく笑う。


「間違ってるんですよ」

「間違ってる?」

「はい」

「どこが」

「俺のことを、ちゃんと見てない」


静かな声だった。


「“優しい人”ってラベルを貼ってるだけ」

「それが嫌?」

「嫌というか」


少し考える。


「怖いです」

「怖い?」

「そのラベルで好かれてるなら」

「うん」

「本当の俺が出たら終わるじゃないですか」


沈黙。

遥は少し首を傾ける。


「本当のおまえって何」

「……わかんないです」

「じゃあ」

「はい」

「何が出ると終わると思ってるの」


相談者は視線を落とす。


「たぶん」

「うん」

「普通の人です」

「普通?」

「優しくもないし、特別でもない」

「それで終わる?」

「終わると思います」


遥は少しだけ笑った。


「じゃあ」

「はい」

「みんな終わってるね」

「え」

「普通しかいないから」


相談者が顔を上げる。


「でも」

「うん」

「“優しい人”って思われてるなら」

「うん」

「それ守らないといけないじゃないですか」


遥は肩をすくめる。


「守らなくていいよ」

「でも」

「壊れたら」


少し間を置く。


「その人はおまえのこと、ちゃんと見てなかっただけ」


相談者は黙る。

遥が続ける。


「ラベルが好きな人は」

「うん」

「人じゃなくてラベルと付き合ってる」


静かな声だった。


「おまえと付き合ってるわけじゃない」


長い沈黙。

相談者がぽつりと聞く。


「じゃあ」

「うん」

「褒められたとき、どうすればいいですか」


遥は少しだけ考える。


「そのまま受け取ればいい」

「でも違う」

「違ってもいい」

「え」

「人はだいたい」


少し笑う。


「勘違いしながら生きてる」

「……」

「たまに当たる。

それで十分」


相談者はしばらく黙っていた。

それから小さく言う。


「じゃあ」

「うん」

「優しいって言われたら」


遥は軽く頷く。


「ありがとう、でいい」


少しだけ間。


「たぶん」

「うん」

「それで、その人は満足する」

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