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『お餅』🌹
361
るしゅ
首から下が、 透けている。 透は、スマホを落としかけた。 ガタッ。
伊織
透
自分でも、声が遠い。通信越しみたいに。 奈央が、 涙目で頷く。
奈央
でも。その言葉に、確信がなかった。 “見えている気がする”。 もう、その程度。 授業中。担任は、最後まで透を当てなかった。 いや。“忘れていた”。 透の席だけ、空気みたいだった。 誰も視線を向けない。 黒板。ノート。教室の音。全部、少し遠い。 透は、自分だけ別の場所にいる感覚になっていた。 その時。後ろの女子達の会話。
女子A
女子B
女子A
透の喉が凍る。そこ。自分の席。
女子B
女子A
透
伊織が、強く机を握る。
伊織
女子A
伊織
女子達が、困った顔をする。
女子B
奈央が、立ち上がる。
奈央
声が震える。
奈央
でも。クラスの空気が、微妙にズレる。 “話を合わせてる”感じ。 本気で思い出せていない。 透は、ゆっくり理解してしまう。 もう。限界だ。 ブッ。 奈央のスマホ。
【未読5件】
奈央
奈央の輪郭が、一瞬揺れる。
透
奈央が、透を見る。 でも。数秒。迷うみたいな顔。
奈央
透の胸が、静かに沈む。 奈央まで、削られている。 その瞬間。教室後ろ。 ギ……。 白石の席。“透”が、立ち上がる。 そして。ゆっくり、本物の透の席へ歩いてくる。 ギ…… ギ…… 床だけが軋む。誰も動けない。 “透”は、本物の透の前で止まる。至近距離。 顔。同じ。でも。向こうの方が、“存在感”がある。
“透”『もう返事来ないね』
透
“透”『みんな、お前を後回しにした』
教室が静まり返る。
“透”『だから空席になる』
その瞬間。透の席。 ギギギ…… ひとりでに、後ろへ動き始める。白石の席の方へ。
奈央
奈央が、机を掴む。止めようとする。でも。 ズルッ。 席は動く。まるで。 “空席”へ戻ろうとしているみたいに。
伊織
透は、動けなかった。 体が軽い。感覚が薄い。手。透けている。 足元も。床が見える。 その時。“透”が、静かに笑う。
『安心して』
『完全に消えても』
スマホを掲げる。
『通知だけは残るから』
ブッ。 教室全員。通知。
【朝比奈透:まだいるよ】
その瞬間。透の体が、一瞬ノイズになった。
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