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奈 ウ .
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昼休み。
輪の中は笑ってるのに、少し外は静かだ。
生徒はその境目で止まったまま言う。
「入れないんですよね」
遥は窓際にいる。
「どこに」
短く。
「ああいうとこ」
視線だけで指す。
「楽しそうなとこ」
一拍。
「行こうと思えば行けるんですけど」
間。
「タイミング逃してもう無理になる」
遥は見ない。
「何が無理になる」
短く。
「今さら感」
即答。
「途中から入ると」
一拍。
「“なんで来たの?”みたいな空気になる気がして」
教室の笑い声が少し遠い。
「で、結局」
続ける。
「端にいるまま終わる」
沈黙。
遥は少しだけ視線を向ける。
「最初から入ってるやつも」
短く。
「全員うまくやってるわけじゃない」
生徒は苦笑する。
「でも、入ってるじゃないですか」
遥は言う。
「入ることと」
一拍。
「馴染むことを一緒にしてる」
生徒は止まる。
「……あ」
遥は続ける。
「最初は浮く」
短く。
「それが普通だ」
沈黙。
「でも」
生徒は言う。
「浮いてる状態でいるの、きつくないですか」
遥は即答する。
「きつい」
短く。
「だから」
一拍。
「入る回数が減る」
生徒は黙る。
「で」
遥は続ける。
「“入れない人”になる」
教室の空気が少し重くなる。
「……それ」
小さく。
「まさにそれです」
遥は机に手を置く。
「入る時に」
一拍。
「“戦力”になろうとするな」
生徒は眉を寄せる。
「戦力?」
「面白いこと言うとか盛り上げるとか」
一拍。
「そういう役割」
生徒は少し気まずそうに笑う。
「やろうとしてました」
遥は言う。
「いらない」
短く。
「入口はそれじゃない」
沈黙。
「じゃあ何ですか」
遥は少しだけ考える。
「リアクション一個でいい」
一拍。
「笑う。頷く。それだけ」
生徒は止まる。
「……それだけでいいんですか」
遥は短く答える。
「十分だ」
教室の笑い声がまた響く。
「会話に入る前に」
遥は続ける。
「場に入れ」
一拍。
「参加と発言を分けろ」
生徒はゆっくり頷く。
「……いきなり話そうとしてたかも」
遥は何も言わない。
「だからタイミング逃すんだ」
小さく呟く。
沈黙。
「あと」
遥が言う。
「途中参加を気にしてるのは」
一拍。
「お前だけだ」
生徒は少し驚く。
「え」
「話してる側は」
短く。
「内容で手一杯だ」
沈黙。
「入ってきた順なんて見てない」
生徒は息を吐く。
「……確かに」
少し笑う。
「自分ばっか気にしてました」
遥は言う。
「見る場所を間違えるな」
短く。
「自分じゃなくて場を見ろ」
教室が少し広く感じる。
「……やってみます」
生徒は立ち上がる。
視線を輪の方へ向ける。
「とりあえず、近くまで行きます」
一拍。
「話さなくてもいいなら」
遥は短く言う。
「それでいい」
生徒は歩き出す。
完全には入っていない。
でも、もう外でもなかった。
“入る”は、喋ることじゃない。
その場にいることから始まる。