蒼い鏡の被害記録官 ――百年目の恋は、鬼の名を記すところから始まる――
登場人物一覧
ロビサ
被害記録局の見習い記録官。蒼い鏡の欠片に触れた影響で、まだ死んでいない人の最期を断片的に見てしまう。手順を重んじるが、誰かを見捨てることができない。
ハディジャ
下町で荷運びや修理を請け負う青年。人懐こく世話焼きだが、体内には鬼王の核の残響が宿っている。ロビサと反発しながらも、彼女とともに真相へ踏み込んでいく。
ヴィットリアーナ
王都監察院の監査官。学院時代はロビサの親友だったが、三年前の記録改竄疑惑をきっかけに断絶した。冷たい態度の裏に後悔を抱えている。
レドルフ
旅芸人出身で、死者の人生を語る送辞役。重苦しい場でも人の呼吸をつなぎ、終盤では忘れられた死者たちの名を都へ響かせる。
モンシロ
被害記録局の現場班長。若手を危険地帯へ放り込まない慎重さを持つ一方、過去の撤退判断を引きずっている。
リュバ
工房責任者。記録針の整備、紙片復元、ムーンストーン調律を担う。否定から入らず、手を動かして突破口を探す。
ウマル
討鬼騎士団の青年士官。都を救う英雄になろうとするあまり、蒼い鏡の強制起動という危うい手段へ傾いていく。
レイノルデ
記録官養成学院の教官であり、被害記録局の顧問。幼いロビサを救った言葉が、彼女の生き方の支えになっている。
エナシェ
炊き出し係兼薬膳担当。温かい食卓で人の心をほどき、対立する者どうしを同じ鍋の前へ座らせる。
ニッキー
事務官。帳簿や申請書、封印記録を洗い直して証拠を集める、実務に強い支え手。
----------------
あらすじ
夜霧に包まれた城塞都市ルクスバールでは、鬼に害された人間は七日後から人々の記憶から薄れていく。被害者の名と最期を記し、この世につなぎ止める見習い被害記録官ロビサは、鬼害現場で蒼い鏡の欠片をかざした瞬間、死者ではなく見知らぬ青年ハディジャの姿を見る。
やがてロビサは、自分が蒼い鏡に選ばれた花嫁候補であり、ハディジャが鬼王の器にされかけた存在だと知る。さらに母が遺した破れた手紙を追ううちに、「花嫁を捧げれば都は救われる」という王都の儀式そのものが、百年前に書き換えられた偽りだと判明する。
失われた名前が沈む地下迷宮、断絶した親友との再会、百年前の恋の残響。