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ハチ
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朝の教室。 ざわざわしているのに、一角だけ空気が違う。 一番後ろ、窓際。 その席だけ、少しだけ距離がある。
榊
誰も返さない。 椅子を引く音だけが、やけに響く。
ガタ。
一瞬だけ、数人が見る。 すぐに逸らす。
小田
菅原
笑いが小さく広がる。 榊は何も言わない。 鞄を置く。 ノートを出す。 その動作一つ一つが、“見られている”。 でも、誰も話しかけない。 担任が入ってくる。 黒板に日付を書く。
担任
一瞬、教室の空気が動く。 榊も、わずかに顔を上げる。
担任
小田
担任
笑い。 何人かが、榊を見る。 すぐに逸らす。
菅原
榊の手が止まる。 でも、何も言わない。 一時間目。 教師が当てる。
教師
榊
立つ。 その瞬間。 後ろで、小さな声。
小田
菅原
くすくす。 教師は気づかない。 榊は答える。 でも、声が少しだけ小さい。
教師
小田
笑い。 榊は、もう一度答える。
榊
教師は満足して、次に進む。 でも。 その後ろで。
菅原
小田
榊
初めて、教室で自分から言葉を出す。 一瞬、静まる。
小田
菅原
榊
空気が変わる。
小田
榊
菅原
笑いが強くなる。 誰かが机を軽く叩く。
コツン。
その音が、やけに響く。 昼休み。 榊は席に座ったまま。 誰も近づかない。 でも、完全に放置されているわけでもない。
小田
榊
菅原
わざと、後ろに向かって話しかける。
菅原
返事はない。 でも。 椅子が、少しだけ軋む。 ギ、と。
小田
笑い。
榊
小田
机を指で叩く。
コツン。
コツン。
後ろから。一拍遅れて。
コツン。
榊の手が止まる。
菅原
榊
小田
榊
小田
榊は答えない。 答えたくない。 でも。
菅原
声が少し低くなる。
菅原
榊
菅原
教室の何人かが、こっちを見る。 興味半分。 面白半分。
榊
即答する。 その瞬間。 後ろの椅子が、強く軋む。
ギッ。
榊の肩が揺れる。
小田
榊
菅原
笑い。 誰かが言う。
女子生徒
一瞬、空気が止まる。
小田
菅原
また笑い。 榊は、ゆっくり息を吐く。
榊
その瞬間。 後ろから。 はっきりと、声。
??
榊だけが、聞く。体が固まる。
菅原
榊
でも。声は続く。
??
耳元。近い。近すぎる。
??
榊
小さく呟く。
小田
榊
でも、もう遅い。 クラスが気づき始める。 “何かいる”ことじゃなくて。 “榊が反応してる”ことに。
菅原
小田
女子生徒
笑いが、少しだけ変わる。 興味から、確信へ。
菅原
榊
即答。 でも。後ろから、また声。
??
榊の喉が詰まる。
小田
榊
菅原
机を叩く。
コツン。
コツン。
後ろから。
コツン。
榊は、振り返らない。 振り返ったら、終わる気がする。 でも。声は、はっきりしていく。
??
榊の呼吸が乱れる。
??
女子生徒
笑い。 でも、榊には違う。 これは。 “会話”だ。
??
榊
小さく否定する。
??
榊
強く言う。 クラスが静まる。
菅原
榊
教室が凍る。 その瞬間。 後ろの椅子が、大きく鳴る。
ギィッ。
誰も触っていないのに。
女子生徒
小田
菅原が、ゆっくり榊の後ろを見る。 沈黙。 数秒。
菅原
笑う。 でも。すぐに、顔が曇る。
菅原
榊
菅原
教室の視線が、一斉に集まる。 確かに。 榊の椅子の後ろ。 もう一つ分のスペースが、“潰れている”。 まるで。 誰かが、ずっと座っているみたいに。 榊は、ゆっくり呟く。
榊
その瞬間。耳元で、はっきり。
??
榊の肩に、重み。 見えない何かが、寄りかかる。
??
呼吸が、混ざる。
??
榊の視界が揺れる。 教室の声が遠くなる。
小田
菅原
榊は、動けない。 後ろから、腕が回る感覚。 見えないのに、確実に“触れている”。
??
嬉しそうな声。 でも、温度がない。
??
榊
声が震える。 でも、力が入らない。
??
耳元で、囁く。
??
黒板に、いつの間にか文字。
“固定席:榊(2名)”
誰も書いていない。 でも、消えない。 担任が入ってくる。 一瞬、黒板を見る。何も言わない。
担任
誰も反論しない。 榊は、座ったまま。 後ろの重みが、離れない。 クラスの誰かが、ぽつりと呟く。
女子生徒
小田
笑いが戻る。 でも、前より少しだけ静か。 榊は、もう振り返らない。 振り返らなくても、分かるから。 後ろに、“ずっと座っている”ことが。 そして。それを。 自分だけが、はっきり感じていることも。